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「うつの世界にさよならする100冊の本」を読んで

  • 2008年4月29日(火)

最近、お知り合いになった寺田真理子さんの本です。

カウンセラーという立場からも、私自身うつ病で苦しんでいた立場からも、非常に共感できる本でしたので、本格的に書評を書かせて頂きました。

最高に癒される、お薦めの一冊です。



「うつの世界にさよならする100冊の本」を読んで

 
私は、カウンセラーとして、うつ病などで悩んでいる人からこのような相談を受けることがある。「今の自分に、お薦めの本はありますか?」と。私は、この質問にこれまでうまく答えられなかった。しかし、つい最近ようやく、しっかりと答えられるようになった。「『うつの世界にさよならする100冊の本』がいいですよ」と。
 
私自身、実は5年半にわたって、うつ病を経験してきた人間である。その私が、この本のタイトルを初めて聞いたとき、実は2つの疑念を持った。ひとつは、「私がうつ病のどん底の時は、活字を見ることもできなかった。この著者は、うつになったといっても、軽いものではないか」。そしてもうひとつは、「この本は、ただの100冊の本の推薦本ではないか」と。しかし、実際に本書を手にとって、たった最初の数ページを読んだだけで、その認識は180度変わった。
 
「死ぬことばかり考えていませんか?」から始まる文章は、著者の一般的な日本人では境遇し得ない境遇と、その時の心境が吐露されていた。そして、私自身が体感したのと同じような、仕事に関する深い悩みも書かれていた。印象的なフォトと共に、彼女の世界と私自身の過去がシンクロしていった。
 
私が重度のうつ病だったとき、まるで仕事が手につかない時、よく職場の隣のビルにある書店に走った。このどん底の気持ちを救ってくれる本はないだろうか、と。たくさん並んでいる本を見るだけでも憂鬱なので、「こころの病気」に関する書棚がどこか探す。そして見つけると、「うつ病」というキーワードで「うつ病の対処法」だとか、「うつはこうして治せ!」といったタイトルの本に、自分のこころの特効薬はないかと必死になって探した。何か、すぐに実践できるアドバイスはないかと。だいたいは、逆にどの本を買っていいのか悩んでしまって、逆にどんよりしながら職場に戻ったものだ。あるいは、たまたまよさそうな本を見つけても、そこに書いてあるアドバイスが効いているのは、せいぜい2,3日である。
 
うつの時に必要とされる本、それは、その時の気持ちに寄り添ってくれる本である。この本はまさに、その、「寄り添ってくれる」本であった。「うつ」と一言で言っても、その状態は、ベッドから全く起きられず誰とも顔を合わせたくないどん底のときから、憂うつがちょっと進んだくらいの状態まで、さまざまな段階があるし、それは人によって変わったりする。この本は、その時の気分、気分に寄り添ってくれる。そして、その時々に支えとなる本を紹介してくれる。例えばまったく活字を読めないときは、お薦めの写真集や画集が紹介されている。例えば、その次の段階では、いかに「はじめの一歩」を踏み出すか、という本が紹介されている。
 
そしてこの本は、心が病んだ人への様々な気配りがされている。絵本のような動物のイラストが入った表紙、うつの本でこんなに優しい本は見たことがない。心が安らぐ紫のページをめくり、透ける用紙に書かれた本のタイトルと、その用紙の向こうに見えるオレンジがかった雲のフォト。ここを見ただけで、なぜか泣きたい気持ちになる自分がいる。そして、特に最初のほうは、それこそこころが寄り添えるフォトがたくさん散りばめられている。本の前半部分がカラーになっているのも著者の心遣いである。
 
最初の疑問点だった二つ目、「ただの100冊の推薦本ではないか」。この疑問も大いに裏切られた。この本は、著者のエッセイと、本の紹介の二本立てであり、それが見事にコラボレートしている。紹介された100冊の本は、9個の大テーマに、さらに23の小テーマに別れている。そして、それぞれのテーマに関する本の紹介の前に、必ず、そのテーマに関する著者の想いが2ページに渡って書かれている。この想い、これは辛い思いをした人でないと決して書けないものである。例えば、「精神的に追い込まれたときに、何よりも先に切り捨てられていくのが「美」。だけど、「美」を切り捨てることで、ますます心がすさんでいった」「だけど、ふと思い立ってメイクをしてみただけで、ほかの状況は何一つ変わっていないのに、きれいにした自分の姿をみただけで、すごく前向きな気持ちになれた」。私は男性だが、風呂も入らず、ずっとパジャマ姿だった時と照らし合わせると、その気持ちが痛いほどよくわかる。そんな著者からの言葉だからこそ、各エッセイの最初の呼びかけが共感を呼ぶ。「すべてを一度に変えようとしていませんか?」「外へ外へと答えを求めようとしていませんか?」「誰かのことを憎んでいませんか?」。辛かった時に、そして今だって、すぐに「そうなんです!助けてください」とさけびたくなる問いかけばかり。このエッセイ部分だけを切り取って再度読んでみたが、これだけで立派な著者のストーリーになっている。辛い時をどうやって乗り越えたか、それが著者の具体的な過去の経験と共に誰もが共感できる形で書かれている。この本は、決してうつの人だけでなくて、誰にでも読んでほしい本である。
 
100冊の本のそれぞれの紹介部分に関しても、読者のこころへの投げかけがある。もちろん、その本ごとの要約も書いてあるが、特筆すべきは、ちょっとだけ太字で書かれたそれぞれの本から抜粋した文章ある。哲学的な話から、ちょっとこころを楽にするポイント、小説の主人公の言葉まで、この抜粋部分を切り取っただけでも、数多くのこころに響くメッセージがある。きっと、それは著者自身が、辛かった時にこころに響いた言葉達であろう。「特に、これは読みたい」という本に丸を付けていったら、結局は半分以上に丸がついてしまった。丸がついた本がどのテーマに多いのかをチェックすると、自分が悩んでいて解決したいテーマ、あるいは自分が好奇心が高いテーマがわかり、参考にもなる。
 
心理学的にも、その人の悩みを解決するのには一通りではなく、行動療法、認知療法、潜在意識に呼びかける方法、たくさんの方法があり、その人自身の性格や、環境によって大きく左右する。この本は、そのような療法を難しい言葉を使わずに、辛い時にでも理解しやすいわかりやすい言葉で進んでいく。
 
そして、カウンセリングで絶対に必要なこと、上記の療法のベースになるもの、それはこころを「寄り添う」ということ。その人の心の痛みを、自分の痛みとして寄り添えるか。私は、カウンセリングには言葉なんていらない、と思うことが多々ある。この本はまさに、「言葉を発しないカウンセラー」と言っていいかもしれない。
 
著者が、辛かった時の自分を顧みてこの本を執筆したのには相当の労力を要したと思うが、その成果物は見事に完成されている。もちろん、監修の佐藤伝氏、編集の錦織新氏、寄稿した衛藤信之氏など、豪華な布陣も筆者の支えになったことだろう。
 
この本が、悩みを持っている多くの人の手元にいつでも置いてあって、こころが楽になり、幸せに近づいていく支えとなることを願ってやまない。
 
さわとんメンタルカウンセリング 代表 澤登 和夫

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